半径5メートルはババァゾーン

38歳一ババァの日常を皆さんにお届けします。

友達の話

トイレにヒラリー・クリントン

父が「家賃3万円か。4万円の物件もあるけれど1万円浮く、1万円あれば色々出来るぞ。」と助言をくれた。1万円が読みたい本と雑誌にたちまち消えていった、そんな女子大生一人暮らしの話から。

2007年のクーリエ・ジャポンだったかな。アメリカ初の女性大統領への機運が高まっているときで、ヒラリー・クリントンへのロングインタビューが大きな顔写真付きで掲載されていた。うろ覚えだけど、そこに「(弁護士・政治家としての)キャリアと子どもを得るのに犠牲にしたものは何かと聞かれる。それは友達よ。」と書かれてあった。

狭いユニットバスに顔写真を貼り、それから交友関係をあきらめる合言葉として「ヒラリーも無理なんだから無理。」と言い聞かせてきた。お金がなかった。

世間知らずで読むべきと強迫観念に駆られる文章がたくさんあった。子どもを強く望んだわけではないが、世間が若者に求める肉体労働をこなすための安らげる寝床を要した。働き、読み、寝る。

交友関係は同棲相手との共通の友人だけにとどめる。改めて思い返して、トイレにヒラリー・クリントンの顔写真貼る女子大生の家に転がり込む男は変わっている。

ヒラリーの政治信条なんて詳しく読んでない、ただ交友関係のみに力を注げない傲慢さを誤魔化す手段として「ヒラリーも無理なんだから無理」を便利に使った。同棲相手とは5年付き合って結婚した。

干支一回りで友達をつくりなおす

12年仕事をして大怪我も経験し、子どもも3人できて、経済的に一応安定した。自分にできることがわかると、やるべきことと読むべき文章も決まってくる。全快はしたが怪我をするとやれることも制限される。この環境でしか生きられないと決めたら、その環境を維持さえしたらあとは自由だということが分かった。

余裕ができると、自分の将来のための活動が全て嫌になった。働くことは自分を全体に貢献できる形に変えて最終的な利益を得ることだ。先々の自分の利益のために、そのときやりたいことを制限していることが辛くなってきた。

「ヒラリーも無理なんだから無理」では続かなくなった。仕事と家庭(子ども)のために交友関係をセーブする生き方はどうにも行き詰る。そもそもワスは未来の女性初の首相候補じゃない、そこまでは分かった。

気づいてから2年、夫に「やりたいことをやらない💢」と怒られるほどに好きにしてきた、しかし、まだわからない。ただし、先々の自分の利益のために動いて12年、得られるものは大きかったことを書いてこの文章を終える。まあ、それらも好き勝手していたら明日失うかもしれないのだけど。